1.06.2006

一瞬のおまじない

地下鉄線を乗り換えするために、車輌を降りた。4番車輌に乗っていたと思う。
降りたばかりの電車を見送っていた。

ホームには、6両電車のちょうど真ん中辺りに駅員が立ち、前方のドアを確認、人差し指をさして腕をピンと伸ばす。ピンと伸ばしたままの腕をブランコのように、反対方向に向けて、後方を確認。再び、前方に向いて、最後にゴーサインを出す。ドアがプシューっと閉じ、数秒経つとようやく電車が動き始める。昔のテレビゲームの安っぽい効果音のように、電車が加速するにつれて「ぎゅいーん」という音がぐるぐる低音から高音へ。4番車輌、5番車輌と、駅員の前を過ぎて行く。

最後の、6番車輌では車掌さん(でいいのかな?)が窓から肩まで乗り出している。駅員と車掌の目が合い、お互い右手を上げて敬礼する。駅員は白い線すれすれの位置で立っているので、そのまま、二人とも目を合わせたまま敬礼のポジションさえ崩さなければ、6番車輌が駅員の前を通り過ぎる瞬間に二人はハイタッチをしていたはず。

動くな・・・動くなよぅー・・・なぜか、無性に二人のハイタッチを見たくて仕方が無かった。スパーン!という音がホームで響くのを聞きたかった。これさえ見られれば、今年の正月は良かった、きっと今年はいい年になる、と少女趣味じゃあるまいがそんなおまじない的な妄想もあった。

駅員は敬礼のポーズを崩しはしなかったが、ハイタッチをする前に黄色い線まで下がってしまった。

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