1.25.2006

終結させたい

女は寝る支度をしていた。
4.5畳の寝室には古いタタミがしいてある。

今までこの部屋で暮らしてきた人の中で、彼女が何人目になるのかは知らないが、明らかにこのタタミは10年以上つかわれ続けている。部屋を下見しにきた時からそう思っていた。ふすまを閉じてから、女は布団に入って、灯を消す。目をつぶる。そして、眠りにつくのを待つ。

寝よう、寝よう、と考えてしまう夜に限って眠れない。どれだけ経ったのか分からないが、10分くらいか、目をつぶっていることが、つぶっている状態を保つのがどんどんつらくなってきて、とうとうあきらめて目を開いてしまう。ところが、目を開くと、部屋の中に灯を感じる。彼女は起き上がって、ふすまの方に目を向ける。

ふすまが少しだけ、2センチほど開いていて、電気をつけっぱなしにしていた居間の灯が寝室に迷い込んでいた。彼女は立ち上がって、ふすまをピシャっと閉じて、ふとんに戻った。

あたし、ふすめ閉じてなかったっけ。

まだ眠りにつけない。目を開けずに、今度は30分耐えたか。1時間経ったか。時間の感覚はすっかりなくなっていた。そして、目をまた開くと、再びふすまの隙間から灯が覗き込んでいた。静かに、静かに、遠慮がちに。覗き込んでいた。彼女を居間へ誘い出すかのように。

寝てた?

眠れないの。

じゃあ、こっちへキナヨ。

でもね。あ・・・。

ふすまをしっかり閉じたはずなのに、二度同じことが起きるなると女はさすがに驚いた。恐かったので、居間に入ってまでして灯を消す勇気はなかった。そっと起き上がり、ふすまをピシャっと閉じる。もう目をつぶれない。暗い部屋の中、掛け布団にくるまって、起き上がった状態でふすまをじっと見つめていた。いつ、まだ開くのか。

まばたきした瞬間に、ふすまが開いていた。

「分からないのよ」

怒鳴ったとたんに、ふすまはピシャっと、勝手に閉じた。

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