7.22.2005

セブン

仕事の後、下北沢のライブハウスにメンバー募集のビラを貼りに出かけた。既に20:00を過ぎてしまっていたので、残念ながらライブハウス以外でも貼らせてもらおうと思っていた、楽器店はもう閉まっていた。途中でケーキ屋さんに寄り、シュークリームとプリンをヨメの土産として買っておいた。駅に向かい、千代田線直通の綾瀬行きを待った。

電車がホームに到着すると、私は一番後ろの車輌に乗った。クーラーが強めで気持ちよかった。空席の運転席を背に、壁によりかかった。電車が動き始める。まっすぐ前方を見ると、電車の車輌がくねくね曲がるのが見えて、なかなか愉快。全部の車両が完全の一直線になったとき、果てしなく長い廊下を見下ろしてるようで、不思議な感じだった。そんな直線がしばらく続いていた時、私は一番前の車輌まで歩くことにした。そのときには既に、電車は地下にもぐっていた。

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普通のサラリーマンでも2億円ためることができる、と、うたう広告が目に入る。きっと、最近好調の株と投資信託とユーロでも推薦するものであろうと推測する。流行モノを買うだけ、タネも仕掛けもない。今のバブルは近い将来に一度は必ず大きくコケると信じてる。今まで儲かっていなかった会社が1、2年で急に良くなったはずが無かろう。ファンドやらライブドアやら市場側はドンチャン騒ぎである反面、肝心の事業構造は多くの業界に渡って変化なし。当然、そうでない会社も例外的にあると思うが。ちなみに、お金の使い道を推薦してくれる広告もゴマンとあった。

6号車を通り抜け、5号車へ。現在地、日比谷。ドアが中々閉じないと思ったら、アナウンスが流れ、急病人のためしばらく停車。犯人はお前か。40代くらいの太めの男が座ってる。半袖ワイシャツとスラックスのクールビズ・ファッションにひどくミスマッチな真っ赤なアウトドア用のリュックサックを背負ってる。座ってるのに。足元には大量の下呂。男は恥ずかしかったのか、酔っていて訳が分からないだけだったのか分からないけど、顔を上げようとしない。仕方なく自分の下呂を見つめるだけ。車掌が実際の病人に向かって通り過ぎたが、「大丈夫ですか」と一声かける。返事のかわりに男は上下にカクカク頭をフルだけ。

5号車から4号車へ。30代の女性が二人、仲良く喋っている。パステル色の洋服。歩いていたので少ししか会話が聞こえなかったが、飼っている犬の写真を見せ合っていたよう。お互い「いっやーん、ウチのよりかわいいじゃん」という。彼女等の目にウソはなさそう。声が車輌中に響く。

3号車。ドア脇に立つ、私に良く似たサラリーマンが立っている。ピンストライプのグレーのスーツ、太いフチの眼鏡、やや太め。熱心に携帯電話をいじっているが、時々顔を上げて、キョロキョロ見回す。誰かに見られていないか確認するかのように。

2号車。50代の男と30代の女が隣同士に座っている。女は寝てしまっている。電車が少し揺れると、ついつい男の肩に寄りかかってしまう。男はうるさく舌を鳴らして、席を立つ。ハッと女は起きるが数秒後、再び寝てしまう。

1号車。偶然にも、毎朝通勤電車で見かける女が座っている。小柄で、肌は色白。清楚な身なりをしている。少し細いたれ目、短めのチョコレート色の髪。上品に赤い唇。私にも気付いたらしく、初めてやさしく笑いかけてくれる。私に手招きをする。いや、もっと近く。耳を近づけるように合図される。ささやく。「私が欲しいんでしょう。ガスガス、ファックしたいんでしょう。」通勤電車の女と同じ人とは思えなかった。

何も起きず。
何も起こさず、私は電車を降りた。

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