2.23.2011

ニッキー・サンチェズ

ニッキー・サンチェズは日本にもういない。彼は先日南米に強制送還されたからだ。どの国だったか、彼の身近な友人も知らない。それは、ニッキー・サンチェズが友達に対して隠し事をしてた訳ではなくて、ニッキー自身どの国が古里か知らないからだった。ニッキーは日本で生涯のほとんどを過ごしていて、移民してきた両親もニッキーにその話をしたことがなかった。両親は何年前か交通事故で亡くなっていた。まさか、一人ぼっちのニッキーが覚えのない外国に行かされることになるとは思いもしなかったことだろう。

そういう意味では、この事態を説明するに、強制、までの言葉は合っているけれども、送還、ほど間違った言葉はないのであった。

スペイン語や、ポルトガル語どころか、英語だってまともに使えない。とても、気の毒だ。友達はニッキーと励まそうとした。でも、これからニッキーを待ち受ける困難をやわらげることはできないし、事態の不平不満を何度も何度も繰り返すことが精一杯だった。

ニッキーは最後まで泣いたりしなかった。何語、どの国か分かったらみんなにメールしてやるよ、しばらくかかると思うけどね、と笑ってみせた。

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