2.13.2011

工藤捜査員の趣味

工藤捜査員が猫を発見したのは木曜日の夕方だった。アパートの借り主が行方不明になってから二週間ほど経つ。ドアをガチャリと開けるとすかさずニャア、と驚いたドラ声が聞こえる。部屋の奥から頭をひょこっと顔を覗かせて、捜査員を一目見ると、なぁんだ、といわんばかりに再び引っ込む。

工藤捜査員はたまたま猫好きだったこともあり、思わず任務をそっちのけにして、ニャー子、でておいでちっちっちー、と呼びかけてみた。猫好きというのは対象の可愛い・不細工はおいといて、まずはとりあえず声をかけてみる。それは、可愛い・不細工問わずに猫にモテることが嬉しいからである。ナンパの理屈からさほど遠くないといえよう。

さて、猫だが、首輪にトラ、と名前が書いていた。見事なくらいのおデブである。二週間の間、飲まず食わずに放置されていたとはとても思えない。本当に飢えそうな猫だったら、主人であろうが工藤捜査員であろうが食べ物をねだって来てもおかしくないはずだ。工藤捜査員がしらべたところ、アパートは密室であり、猫が自由に出入りできるようなところはない、と判断し、上席に報告した。猫のずぼらな態度を見れば、その要領はないとすぐ分かるものだが。

結果、工藤捜査員はちゃんと仕事をしろ、とこっぴどく叱られた。

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