5.15.2010

最初で最後の最初の

山田徳郎、46才。

日本人の核家族化は誰もが事実として受け入れていることだと思うんだ。これには、恐らく私の親父の世代の性格も少し関係していると思う。親父は農家の次男坊で、兄貴が家をつぐのに自分も田舎にいてはつまらないという理由で都会にでてきた。半分ひがみ根性で来たくせに、思いのほか都会のくらしは上手くいき、仕事も成功して家族もできた。そのうち時の流れも見失い、気づけば骨の芯まで都会人になっちまってる。

罪悪感の裏返しなのか面倒なのか、親父は田舎の話はめったにしなかったし、遊びに行った回数は三本の指で済む。私も小さいころから田舎との縁が細かった気がする。やがてそんな親父も独りぼっちの立派なじじいになると、お前の世話にはならんと言って、えらく力んでてね、これが。自分には、悩む余地がないくらい決まりきっていたことだった。

そんな親父がこうなった原因がなんだったにせよ。急に死んだときには本家はとっくになくなっていて、はて山田家の墓はどこだっけ、と素朴な疑問に答えられる人が一人もいなかった。どうにもお粗末な話である。

仕方なく新しく山田家の墓をたてることにした。こんなこと言うとバチあたりだけど、日本中にいったいいくつの「山田家ノ墓」が既にあるだろう、なんて思ったりして、またそれを一つ増やそうとしていることに申し訳なくすら思えた。

一応、ながく使うものなので少し立派なものにした。せっかくたてるのなら、子供がいつかできたら墓参りくらいはしっかりさせておきたいと思う。

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