11.02.2009

おととい先住民

ここは小さな南の島。時刻は分からない。私は、砂浜で意識を取り戻そうとしている。船が嵐にあったのはおそらく昨夜のことで、私は波に運ばれてここまできた。そしてここは小さな南の島。時刻が分からない。

生き残ったことが良かったことなのかどうかは、まだ分からない。ただ一度は失ったものと考え、命を粗末にするつもりもない。

この無人島は無人島でなかった。若い男が、すぐとなりで体育座りしている。ニコやかな表情だ。仮にボロボロの洋服の替わりに海パンでもはいていたならただの、海に遊びにきた若者に見えたはずだ。

大丈夫ですか、と尋ねてくる。大丈夫もなにも、このありさまだ。若者は私のために水と見たことのない木の実を持ってきた。どれが食べられる木の実かよくわからないですが、今のところまともな味をしてるのはこれだけで、と説明される。私も先週ついたばかるなんです、という。

あなたが来てくれて、うれしいと若者は言う。カワイイ女の子でなくて申し訳なかった、と言ってお互いしばらく笑って見る。私はこの若者がいてくれて良かったかどうか分からない。何せ一人での無人島生活を経験したことがあるのは一週間ぽっちだったとしても彼の方で、私は入門者。

打ち解けた。

いまだ、この島をどう降りるかについて話題になっていない。

渡辺さん、私はこの無人島が好きですよ。

好きかどうかはまだ分からないけれども、まあ良かったと思うよ、と笑って見せた。

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