10.14.2009

センセーション

マスミは近所のコンビニエンスストアに入り、お菓子の列へ直行した。午前10時頃で、ラッシュ直後の店内は空いていた。マスミが買ったのは、明治の板チョコ。月に何度か、ここに買いにくる。彼女にとって、数少ない贅沢の一つである。チョコレートが溶けてしまうと行けないので、必ず小さなレジ袋に入れてもらうことにしている。こればかりにおいては、エコうんぬんの問題ではない。

板チョコは豪快に食べるもの。板がマスに分かれてるのは一口サイズをはかるためにあるのではなく、単に溶けにくくする商品の工夫である。マスミは家に帰るとすぐに包装紙と銀紙を巧みに脱がせる。冷蔵庫に入れる手もあるが、それでは固いだけのチョコになってしまうため、せっかくの食感が害われてしまう。冗談じゃない。はぐ、はぐ、とチョコレートをほおばる。発想が多少危険かもしれないが、板チョコにものどごしというものが明確にあると確信している。飲み込んだ後にため息をもらす。

身体が水を求めている。冷蔵庫から良く冷えたミネラルウォーターを取り出して、扉を開けっ放しでらっぱ飲みする。気持ちのいい寒気が身体をかけめぐる。再び、ため息をもらす。

そんな女性のそんな瞬間が、少し素敵ではないかと思う。

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