4.08.2009

春樹へのラブ

僕は彼女に言った。言ったと言うか伝えた。そう、「言う」と言うことはただ乱雑に言葉を宙にばらまくに等しく、僕が伝えたかった内容の重要性と相手と僕の間にある実にフクザツな今までの経緯をも鑑みると、どちらかと言うと「伝える」という表現の方が間違いない。ということで、私は彼女に言うことにした。あ。

「僕は十三年前に一度たまたまあのバーで帰り際のあなたとすれ違った僕の従兄弟からの又聞きですんごく何のヘンテツのない平凡なOLとすれ違ったぜ、と聞いてからずっとあなたが気になっていました。それからの日々は過酷なもので、僕の人生史上でもっとも苦しい時期と言っても過言ではありません。ちなみに僕はいま神保町の敢えて控えめの古本屋で勤めておりまして、それはそれはあなたのことを考えてる時は仕事に手がつかず悩んでいて、ピュアなことからイヤらしくてここでは言えないくらいアダルティな妄想まで頭を駆け巡るのです。嗚呼、この人はなんて罪な人なんだろう。嗚呼なんて僕は下らないやつなんだろう、バカバカバカ。そんな僕の前にあなたが突然現れるとは運命としか思えません。顔をどうやって分かったって?それは運命ですよ、それとも僕の少年時代に磨きあげた動物的なカンと言いますか。はい、どう?」

「あら奇遇だわ。あなたのことならなんでも分かるような気がするの。いつの間にか今後あたしたち付き合うことになってるみたいだこど、それはおいといて、断っておくけれどもあなたは私のことは何年かけても知り尽くすことは絶対ないし、あなたが私の過去についても一切探ってはいけない条件付きだし、どちらかといえば半永久的にビミョーな関係になるけどそれでもよければなんとなく付き合ってみますか?あぁ、良い忘れましたがあたしもあなたを心より愛してます。」

三頁分の会話を経て、二人は微妙なものの、結ばれることになった。と言う。

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