就寝前は食べない方が良い
明るく照らされた、長い廊下をあるいていた。
左手の壁には、10メートルおきに扉がずらっと並んでいた。
廊下は見渡しきれないほど長く、扉も数え切れない。
後ろを向いてみた。
後ろにも、前方と同じように廊下が続いていた。
当たり前だが、後ろを向くと扉は全て右側だ。
特急電車を逆向きの席で乗ったときに似た、めまいがする。
再び前を向き、歩き続けることにする。
実は、これを何時間も繰り返している。
扉を右側にして歩いたり、左側にして歩いたり。
結果的にもっと進んでるのか、もっと後退しているのか見当もつかなくなった。
前後という概念が意味を失っている。
イヤな夢かなぁ、こんなSF映画あったっけなぁ。
と、ふと思ってしまう。
ようやく覚悟を決める。左手の扉を一つ開けることにする。こいつだ。
扉の向こうは、自分の部屋だった。実にほっとする。
宝くじにでも当選した気分だ。あの廊下への出入り口も姿を消している。
「義之、ご飯よー」
母が呼んでいる。
私の名前は義治だと思っていた。
母はいつも、忘れんぼうだ。
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