1.08.2007

パンツと地震と

不運なことは起きるもので。

男の一家は木造アパートの一室で暮らしていた。

地震が起きたのは日曜日の夜のことで、男はその時間は風呂につかっていた。人に言わせれば大した地震じゃなかったかもしれないが、ボロボロな木造アパートの急所にトドメをさすには十分な威力だった。

ただ、建物が崩壊したというのに、幸いなことにも誰も大きなケガをしなかった。ヨメと祖母と息子と娘はそろって速やかにアパートから離れることができたのだった。その男はというと、何を血迷ったンだか湯船から出ることができず、アゴまでつかってポツリと地震が終わるのを待ってたそうで。気づけば周りの壁がどんどん崩れてゆくは、終いには風呂から夜空を眺めていたそうで。

お湯というのは冬の夜風にあたると驚くほど早く冷めてしまうもので、家族は裸の男を暖めてやるのに一苦労したそうな。そして、市役所から洋服一式借りるときは貸すほうも借りるほうも誰もが赤面したそうで。

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