11.29.2006

アンドロメダ

視線を感じた男はテレビから目を外し、テーブルの方に振り向いた。テーブルに座る友人と目があった。じーっと見ている。友人は開いたスケッチブックを片手に、チャコールの鉛筆で何かを書いているよう。

「何見てんだよ。惚れたか。」

と男は冗談交じりに友人に尋ねる。

「バカ、お前。」

友人は再びスケッチブックに熱中する。
顔を上げては男をチラッと見て、再び書く。

気にならないわけがない。男は立ち上がり、テーブルの方に歩く。ちょっと見せてみろよ。笑わないから。やめろよぅ、いいじゃないか、と幼稚なやりとりが炸裂する。友人はとうとう、ちょっとだけだぞ、と男にスケッチブックをしぶしぶ渡す。スケッチブックはまだ新しい。この一枚の書きかけの絵しかない。

「気味悪いな、この絵。なんで俺の顔なのに、長髪なんだよ。・・・これオッパイか?」

「ウケるじゃん。似合うよ。君、女顔だから。」

「ウケねぇって。うーむ、でも良く書けてるんだがなぁ・・・。やっぱり複雑だよ。俺は。」

「だろうな。」

「なんで?」

「いや、別に。」

「おいおい、ふとやることにしては失礼だな。」

友人は言う。どっちだっていいことじゃない、と。

「服でも書き足してやろうか?」

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