11.28.2006

ロミオとジゥリエッタ

五月雨ロミオのお母さんはイタリア人だから、ロミオという名前がつけられた。周囲には勘違いされがちだけど、お母さんはシェイクスピアの「ロミオ」を意図したのではない。更に言葉の歴史をさかのぼると、「ロミオ」っていうのは「ローマへの巡礼者」という意味らしい。両親は長いこと日本で暮らしていて、ロミオは生まれてから一度もイタリアに行ったことがない。半分だけでも、イタリア語がしゃべれなくても、自分のイタリアの血筋にも誇りを持って生きてもらいたい、という母親の願いが込められた名前だった。

本人はあまり自分の名前を気に入っていないようだ。ただ、高校生までにもなってどうこう両親に文句をつけたところでどうにもならないと理解している。今は、ただひそかに嫌がっている。同級生にはよくからかわれる。女子と普通に言葉を交わしただけで・・・まぁ、想像はつくだろう。からかいやすい名前だった。母親の名前がたまたまジゥリエッタであったということも、ロミオの我慢の負担を悪化させた。男友達はこれといった悪意を持ってからかってるわけでない、でも、ロミオは彼らが思っている以上に苦痛だった。

そんなロミオも全然悪いヤツではなく、からかわれながらもある日、彼女が出来た。名前は小酒井安子だった。安子は心優しい女で、ロミオをハーフだからといって特別扱いをしない少数の一人だった。ただ、付き合うとなると安子も被害を受けないわけでない。いじめとまでは行かないが、不快な思いはボチボチしたみたいだ。

ロミオも安子も両親が共働きで、放課後はどちらかの家に行って、夕方まで時を過ごすのが通常だった。時には散歩をしたり、ファミレスで映画の話をしたり、どちらかの家で抱き合ったり、一緒にテレビを見たり。普通の付き合いというものがあるのであれば、限りなくそこらへんの高校生のアベックと似たような付き合いだった。

18時くらいになると、これから帰宅すると母親から電話がくる。
いま、あなたどこにいるの。

安子と一緒だよ。

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