11.08.2006

ガラパンコネスのコツ

三毛猫のミケポリスナ、メス三才のお話。

ミケポリスナが生まれた年は、ちょうど国際宇宙ステーション「ガラパンコネス」が完成した年。世界中の研究者に行き来させ、たくさんの宇宙のナゾや地球のナゾを解明するために作られた。多くの期待と希望を託された研究者達は鼻息荒く、次々と宇宙へ飛び立った。地球へ帰ってくる彼ら彼女らは英雄のように称賛された。

さて、一年経ってみると、突然ガラパンコネスに向かう研究者の数がどっと減ってしまった。研究のニーズが無くなったわけでない。何かがおかしい。地球の国際研究委員会は、最近帰ってきた研究者を呼び出し、ガラパンコネスでの近況を聞き出すことにした。

その研究者は言う。ガラパンコネスそのものについては本当に申し分がない。最先端の技術、エアコン、CD・MD・ラジカセ。ただ、それでも宇宙はとても孤独なところ。どの窓を除いても外は真っ暗。心細くなるのも仕方がないという。帰ってきた同僚も、再度宇宙に飛び立つにはどうも気が進まないという。国際研究委員会は頭をひねりにひねり、ミケポリスナを一年の間、常駐ペットとして送り込むことにした。ネコの他にもイヌやサルも候補として考えたが、イヌはやかましい上世話やかせのため却下され、サルは器用すぎるので設備を壊しかねないと判断された。ネコだったらモノを倒したりいじったりする恐れもなく、おとなしい性格ゆえ宇宙で接するには最も適任と思われた。

ミケポリスナのおかげで研究者の数も無事に回復し、国際研究委員会はその後も一年間のシフト制で常駐ペットを送りつづけることを決意した。

ミケポリスナは一年後、静かに任務を果たし、地球に帰ってきた。一緒に帰ってきた研究者はミケポリスナの入ったペット用移動カプセルを抱きかかえたままスペースシャトルを降り、前の夜からずっと待っていた飼主に引き渡した。研究者は軽く会釈をし、長い間ありがとうございました、と飼主に伝えた。研究者のファンがチラホラぶらついていたが、静かな帰省だった。

飼主は埼玉県の自宅に帰ると、移動カプセルを開けた。ミケポリスナは慎重に頭だけヒョコっとだしてから、ゆっくり出てきた。少しの間は戸惑っていたようだが、記憶をすぐ取り戻し、お気に入りの台所のテーブルの下にもぐりこみ、その下からにゃーと鳴きながらご飯をせがんだそうな。

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