9.21.2006

ワインと汗が絡み合う

クロエはジプシー娘。お金はないが、幸せだ。愛するカラバンの仲間とともに、終わらない旅をしている。夜はみんなでお酒を飲んで、ダンスを踊る。そんなクロエは19歳で年頃の女。人離れした美貌の持ち主。流れるような長い黒髪に、真夜中の北極星の輝きを放つ青い目。海の大波のような曲線が彼女の身体のラインを描く。

クロエはカラバンを助けるために男を食す。お金を持っていそうな男を誘惑し、借り部屋に連れ込む。薬草がたっぷり入った、毒々しいルージュの口紅をつけ、そのキスで男を眠らせる。翌朝、男の金品はもちろん、洋服さえなくなっている。クロエはクスクス笑いながら男の上着を羽織ってカラバンに戻る。仲間の前でクルクル回って見せつける。

「あたし、街の紳士みたいでしょ?今回下着だけは残しておいてあげたのよ。」

一度も体を許したことはない。それは、お父さんに身体は汚しちゃいけないと教えられているからだ。ワインで太った男、お金で太った男は汚れているぞ、といつも言っていた。

ただ、そんなクロエも、恋なき女ではない。

ある飲み屋でひっかかった紳士に恋をしてしまった。その男は物静かで、心やさしい者だった。部屋に連れ込んだ後、自分がこれからこの男にしようとしていることを思うと、男のことが気の毒でしかたがなかった。そう思い、クロエは毒のルージュをやめ、迷いの挙句男と一夜を過ごしてしまった。ワインと汗の匂いが複雑に絡み合った。

男が寝付くと、クロエはいつも通り男の金品をかき集めて部屋を出た。

仲間の元に返ると、クロエは満面な笑顔を見せた。

「今日はとても気分がいいわ。今宵も街の紳士へ乾杯!」

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