4.13.2006

新芽がでるころ

スタジオがある代々木から、総武線の最終電車にのりました。最近、雨の日が多いです。生暖かくもなってきたので、電車の中はモワモワムシムシしていました。生乾きの洗濯物のような、カビの匂いがほんのりとしました。

こういう日の乗客は、いつもよりおとなしめに感じます。飲み帰りの連中も含めて、なんだか静かです。服や持ち物がぬれてたりすると、動くともっと濡れたり、他人を濡らしたりしてしまうので、比較的動きが少ない。床が滑りやすい。モワモワムシムシした空気の中で騒ぐと、いつも以上にヒンシュクな気がします。理屈はよくわからないのですが、そんな気がします。みんな不機嫌なんだから、みんな不機嫌でいようよ、的な。

背の高い、50代くらいのスーツがドアに向かって立っていました。私はドアの脇に立っていましたが、よく見るとなかなか立派なスーツを着ていました。どこかのいい会社の管理職でもやってそうな。目が大きくて、福耳で、髪の毛はあまりない。でも、佇まいがどうもおかしい。酔っ払ってたのか、それとも単純に気がふれていたのか。うなったり、時には子犬みたいにクンクン鳴く。ムンクの叫びみたいに顔をグシャグシャにしたり。終いには、ドアの窓ガラスに頭をゴンゴン叩きつけはじめました。

やかましくはなかったんです、別に。その静かな空間の一部として、クゥーン、クゥーン、ゴンゴン、ゴンゴン、という雑音が溶け込んでいたように感じました。それにしても、こんなに悲しそうな酔っ払い(或いは気がふれた人)を見たのは初めてでした。電車の酔っ払いって、ステレオタイプですが、何かと怒ってる、という印象しかなかったので、意外でした。

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