11.15.2005

人のせいにする

私が与えたミカンに、サルは夢中だ。
一応、鎖は私が持っている。

サルって、今私の隣に座っているサルのことである。中国大陸の奥地の奥のそのまた奥の、田舎バスに乗っている。サルを挟んで、私が雇っている、現地の通訳の者がションボリ座っている。若い男だ。この男の通訳ミスのせいで、私はこのような状況になってしまったのだ。あ~あ、と、わざと通訳が聞こえるようにため息をしてみる。横目で彼がどう反応するか、ちらっと確認してみる。うつむいたままだ。いつもはうっとうしいくらい話す男なんだが。私が少し怒っただけでこれだけ落ち込むとはいささか心外。よく見るとまだまだ若い。ちょうど二十歳を過ぎたくらいか。

私はこの数週間、大陸で旅をしている。ある村のバザールでは、珍しい動物を沢山取り扱っていた。サルやカメ、イタチや様々な鳥。サルを触ってみてもいいかと尋ねるつもりだった。触るだけでも金はとるぜ。日本円だったら1,000だしな。と商人は言う。思わず1,000円札をそのまま商人に渡した。サルは私の肩に乗ったり、ポケットを探ったり。ところが、満足してサルの鎖を商人に返してやろうとすると、商人は鎖を受け取ろうとしない。

「あんたに譲るよ。1,000円ももらったんだし。」

「困る。」

「こいつにやるエサはもうないんだ。頼むよ。」

通訳を通じて20分くらい言い合いをしたが、一向に相手は譲ろうとしない。どうやら、私はこのサルを買ってしまったようだ。仕方がなく、旅がてら、商人がサルを仕入れた街に行き、買い取ってもらうことにした。そしてこのバスにのっている。

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