11.07.2005

アメとムチ

ボリューム感のある若い娘が土砂降りの中、傘をさして歩いている。

言っておくが、太りすぎているわけでない。つくべきところについているだけであって、キツメのワンピース、いわゆる「ボディコン」という衣装を着用しているため、そのボリューム感が良い意味で対外的には強調されている、ということである。下手したら少しくらいはみ出ている。が、それは周囲を不愉快にさせるものでなく、むしろ、通り過ぎる男たちは皆熱心に振り向く。ちょっぴりいやらしい意味も、人間の女性という生き物の美しさという意味も含めて、本当に良い感じの、ボリューム感、である。古いヨーロッパの油絵に出てくるような女性にもある、ステキなボリューム感。

そして、この娘は土砂降りの夜、傘をさして歩いている。

長い髪の毛がぬれているように見える。傘をさしているのに。

持ち物は小さなハンドバッグだけで、それもぬれてしまわないように、片手でそのハンドバッグを胸元に抱えている。晴れていればそのハンドバッグをルンルンとぶら下げていたに違いない。可哀相な良いボリューム感のある娘。傘をさして足早に歩いている。

容赦なく娘を叩きつける、無数の針のように。あたしは早く帰らないとお父様に怒られるのよ。楽しい夜ももう終わりだわ、終わり。楽しい夜は必ず終わってしまうのね。悲しいわ悲しいわ。しかもこの傘、役に立たないわね。本当に役立たずだわ。どこかに捨ててしまおうかしら。

降り始めた後にさしたって意味がないのに。

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