10.20.2005

なぜ私なんだ

今朝、私は見知らぬ者にさらわれた。暗い。
今、私をさらった者が運転する車のトランクの中にいる。

足を伸ばすわけにもいかず、胎児のように丸まっている。他人からすればかなり間抜けなありさまだと思う。腰が痛い。もう2時間は走っている。高速道路にのった様子だ。ゴトン・・・ゴトン・・・ゴトン。おなかが空いた。

私はごく普通のサラリーマンだ。金はない。むしろ、マンションとクルマのローンで、今の経済力はむしろ、微妙だ。私をさらった者は明らかに金以外の目的で私をさらったはずだ。その者は私のフルネームを確認してから、力ずくで、私の両腕を縛った。

頭が、熱い。

高級車だと、トランクも革の匂いがすることに気付いた。

このクルマは、どこに向かうのであろう。

私は思いっきり足でトランクのフッドを中から蹴った。

車内から、泣きじゃくる青年の声が聞こえてくる。

「あなたがいくら暴れても、私は意地でもあなたを山に連れ戻すんです!師匠。」

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