少年の理性を
「おい、そこのボンズ、なに探してるんでぃ。」
工事現場のアニキが、昼休みがてら公園で弁当をモグモグ食べていた。5歳くらいの少年に話し掛けている。この少年、四つんばいで地面に落ちたなにかを探している様子。母親は近くにいないようだ。本人は気付かぬうちに、アニキの方に近づいてきた。全身ほこりだらけで、小さな指先はずっと地面をなぞっていたため、爪の裏に土が詰まってる。子供にそう問い掛けると、僕の理性、をなくしたんだと。友達とジャングルジムで遊んでいたら、ポケットからぽろっと落ちてしまったようだ。
「そいつぁ、大変だ。その理性っつうのはどんな形なんだ?」
薄い黄色のようなピンク色で、ピカピカに透明なビーダマみたいな形なんだそうだ。おっきなブドウくらいの大きさで。触るとヒンヤリ冷たくて、手で握ってると悪いことがおきないのだそうだ。いつでも身に付けておくよう、母親に言われている。話しているうちに事の重大さに動揺したんだか、少年の声は震えあがり、いまにも号泣してしまいそうになった。
「よし、じゃあオジチャンが一緒に探してやるぞ。ボンズはここを探してて、オジチャンはあそこのブランコのところを探してやろう。」
期待どおりだったのか。ありがとうも言わずに頭を激しく上下に振り、少年は泣き止み、黙々と、前よりも必死に、四つんばいでそこらを探しつづけた。アニキは別にありがとうと言われたかったわけじゃない。せめて昼休みが終わるまでは付き合ってやるか、と自身も四つんばいになって少年の理性を探した。そして、数十分たつと、少年を呼ぶ母親の声がようやく聞こえてきた。
「マサくん、なにやってるの?」
少年にはしっかり聞こえていたはずだ。
砂をかき分ける動作が一気に、加速した。
工事現場のアニキが、昼休みがてら公園で弁当をモグモグ食べていた。5歳くらいの少年に話し掛けている。この少年、四つんばいで地面に落ちたなにかを探している様子。母親は近くにいないようだ。本人は気付かぬうちに、アニキの方に近づいてきた。全身ほこりだらけで、小さな指先はずっと地面をなぞっていたため、爪の裏に土が詰まってる。子供にそう問い掛けると、僕の理性、をなくしたんだと。友達とジャングルジムで遊んでいたら、ポケットからぽろっと落ちてしまったようだ。
「そいつぁ、大変だ。その理性っつうのはどんな形なんだ?」
薄い黄色のようなピンク色で、ピカピカに透明なビーダマみたいな形なんだそうだ。おっきなブドウくらいの大きさで。触るとヒンヤリ冷たくて、手で握ってると悪いことがおきないのだそうだ。いつでも身に付けておくよう、母親に言われている。話しているうちに事の重大さに動揺したんだか、少年の声は震えあがり、いまにも号泣してしまいそうになった。
「よし、じゃあオジチャンが一緒に探してやるぞ。ボンズはここを探してて、オジチャンはあそこのブランコのところを探してやろう。」
期待どおりだったのか。ありがとうも言わずに頭を激しく上下に振り、少年は泣き止み、黙々と、前よりも必死に、四つんばいでそこらを探しつづけた。アニキは別にありがとうと言われたかったわけじゃない。せめて昼休みが終わるまでは付き合ってやるか、と自身も四つんばいになって少年の理性を探した。そして、数十分たつと、少年を呼ぶ母親の声がようやく聞こえてきた。
「マサくん、なにやってるの?」
少年にはしっかり聞こえていたはずだ。
砂をかき分ける動作が一気に、加速した。
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