抜擢
女はただ、いつもの通勤路をたどっていただけだ。
地下鉄の出口から、道を50メートルほど歩き、大きな商業ビルの回転ドアを抜けて中央ロビーへ。3階分の天井の高さを誇る巨大なエレベータホールにはエレベータが16台、通路の左右に8台ずつ、設置してある。それでも全てのエレベータが朝のラッシュでごった返しだ。
ここは5,000人の社員を有する大企業の本社ビル。
皆の表情は緊張感にあふれている。
女は右手の列の3号機のエレベータに乗り込む。満員電車に乗るときの癖で両腕を胸元で組む。自分が勤める会社だからといって、セクハラが起きないとは言い切れないのだ。ただ、いつまで待っても人並みが押し寄せて来ない。扉の方に振り向く。いつもであれば15人くらい詰め寄せるエレベータには6人しか乗っていない。ドアは閉じ始めている。
いや、男が一人、走って乗り込んできた。7人になった。そのままドアがゆっくり、完全に閉じる。偶然だったのかもしれないが、人混みは3号機に入ろうとせず、隣の2号機と4号機へとパラパラ別れていった。不思議なことが起きるものだ。
......................
エレベータ内の独特な静けさ。
最後に走り込んだ男以外、扉の上にある、階数を示す表示版を動物的に見つめている。
「2」...
「3」...
「4」...
「4」...
「4」...
エレベータは動き続けているようだが、表示は「4」のままで変わらない。故障、か。
女は、最後に乗り込んだ男が、ちょうど他の乗員と向き合っている状態であることに気づく。他の者も、一人ひとり、男と目が合う。それを読んだかのように、男は小さく咳払いをし、口を開く。
「みなさん、今日は集まってくれてありがとう。今日は重大な発表があるんだ。」
地下鉄の出口から、道を50メートルほど歩き、大きな商業ビルの回転ドアを抜けて中央ロビーへ。3階分の天井の高さを誇る巨大なエレベータホールにはエレベータが16台、通路の左右に8台ずつ、設置してある。それでも全てのエレベータが朝のラッシュでごった返しだ。
ここは5,000人の社員を有する大企業の本社ビル。
皆の表情は緊張感にあふれている。
女は右手の列の3号機のエレベータに乗り込む。満員電車に乗るときの癖で両腕を胸元で組む。自分が勤める会社だからといって、セクハラが起きないとは言い切れないのだ。ただ、いつまで待っても人並みが押し寄せて来ない。扉の方に振り向く。いつもであれば15人くらい詰め寄せるエレベータには6人しか乗っていない。ドアは閉じ始めている。
いや、男が一人、走って乗り込んできた。7人になった。そのままドアがゆっくり、完全に閉じる。偶然だったのかもしれないが、人混みは3号機に入ろうとせず、隣の2号機と4号機へとパラパラ別れていった。不思議なことが起きるものだ。
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エレベータ内の独特な静けさ。
最後に走り込んだ男以外、扉の上にある、階数を示す表示版を動物的に見つめている。
「2」...
「3」...
「4」...
「4」...
「4」...
エレベータは動き続けているようだが、表示は「4」のままで変わらない。故障、か。
女は、最後に乗り込んだ男が、ちょうど他の乗員と向き合っている状態であることに気づく。他の者も、一人ひとり、男と目が合う。それを読んだかのように、男は小さく咳払いをし、口を開く。
「みなさん、今日は集まってくれてありがとう。今日は重大な発表があるんだ。」
コメント2archive
めちゃめちゃ自分勝手な奴だな(笑)
みなさんも一度、試してみては。
きっと楽しいはず。
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