8.18.2005

夏までの恋

季節はまだ生暖かかった。その頃は19歳だった男。アルバイト先で、板前を務める先輩に飲みに誘われた。「俺の友達が店長を務める飲み屋につれてってやる」、と。その夜、行く前から二人で飲んでいたもので、男は既に軽く酔っぱらっていた。二人はその店長の店に入ると、男はウェイトレスに目を奪われ、気になってしょうがなかった。彼女は22、23くらいだったか。その夜の残りも、板前とその友人の会話にも入りきれず、隙を盗んではウェイトレスに少し話しかけたり、隙を盗んではウェイトレスを見ていた。その後も、何度か男は一人でその飲み屋に通って、彼女となんとか仲良くなれないかと、ぎこちなくも、それなりに必死のアプローチをかけた。当然普通の飲み屋なので、彼女に話し掛けるにも限界があった。時間が足りないと感じていた。

彼女は男をからかった。店長が「良く来たね」と言ってくれるが、彼女はよこから「あたしに会いに来たんだよね」と笑いながら言う。デートに誘ったりもした。二人っきりで会うことこそあまりなかったが、それはどうでもよかった。それを通じて知り合った彼女の友人とは今でもよく連絡を取り合っている。

告白も何度もしてみたが、最後まで男は相手にその気があるかどうかを知ることは出来なかった。肌に触れることもほとんどなく、一度か二度、手をつないだくらいだったと思う。振り回されたという表現は一方的すぎる。自ら振り回されに行っていたと若干マゾ的な自覚症状もあったが、その時はそれはそれでいいと思っていたような気がする。バカだったが、そんな自分もキライじゃなかったかもしれない。

という少し恥ずかしい思い出がある。
思い出です。

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