0番目のドミノ
「今から帰るよ。」
男は毎晩、職場を出るときに、女に一本の電話を入れる習慣があった。女が要望していたわけでもなく、男はお世辞でも律儀ともいえないが、結婚生活10年間の<どこか>で、二人の間にそういった習慣が成り立っていた。些細なことながら、二人は毎日、一度は、このわずか10秒、20秒のやりとりでも夫婦らしさを実感することができていた。
「パパが帰ってくるわよ。」
電話をおくと、女はそう言いながら玄関のカギを開けに行き、子供はドタドタと彼女を追う。カチ。そして、自分と子供の風呂の準備をする。二人だと風呂が長いため、入る前にカギを開けておくのだった。
そして、今夜も電話が掛かってくる。
「今から帰るよ。」
「今日は携帯からなのね。」
「あぁ、うん。」
「今どこ?」
「会社を出たばかりだよ。」
「あぁ、そうなの。じゃあ、気をつけてね。」
「はいはい。じゃあ、ね。」
23秒経過。
男は毎晩、職場を出るときに、女に一本の電話を入れる習慣があった。女が要望していたわけでもなく、男はお世辞でも律儀ともいえないが、結婚生活10年間の<どこか>で、二人の間にそういった習慣が成り立っていた。些細なことながら、二人は毎日、一度は、このわずか10秒、20秒のやりとりでも夫婦らしさを実感することができていた。
「パパが帰ってくるわよ。」
電話をおくと、女はそう言いながら玄関のカギを開けに行き、子供はドタドタと彼女を追う。カチ。そして、自分と子供の風呂の準備をする。二人だと風呂が長いため、入る前にカギを開けておくのだった。
そして、今夜も電話が掛かってくる。
「今から帰るよ。」
「今日は携帯からなのね。」
「あぁ、うん。」
「今どこ?」
「会社を出たばかりだよ。」
「あぁ、そうなの。じゃあ、気をつけてね。」
「はいはい。じゃあ、ね。」
23秒経過。
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