10.09.2011

彼女はいつも現実主義

若い男と人魚姫は出会ってから間もなく恋に落ちた。端から見れば運命的な出逢いと思える。ところが、付き合いはじめてから二週間も経っていないのに早々関係がギスギスしはじめた。

二人とも性格は温厚、人思いでおまけに美形。付き合う状況が悪いように働いたとしか言いようがない。人魚姫は海面からでると息ができないし、若者も逆に水中で息ができない。仕方なく、まともに会話をするにもどちらかが息をとめていないといけない。自ずとデートの場所は浜辺に限定された。あたしいつかディズニーシーを見に行きたいわ、俺は本物のタイタニックをみてみたいな、と言葉はかわすものの、無理に決まっている。体質の問題なのでお互い責めようがないが、四回目のビーチデートの頃にはさすがに二人ともビーチにうんざりしていた。

沖縄、グアム、バリ島にハワイ。次はどこにしようか…。

あたし、もうビーチは、いいわ。

いい、って言ったってなあ。ビーチじゃないと会えないんだから。来週九十九里行こうよ。潮干狩りしよう。

あたし、貝系、アレルギーだから。それに来週は…親戚と予定があるの。

ねえ、さ。

なあに?

君にもし人間の足があったらどんなに楽しいことか、時々思うんだ。

またその話?何度も言うけど、そんなこと無理に決まってるじゃない。あなたが何を期待しているのか分からないけど、魔法使いなんていないんだから、おとぎ話じゃあるまいし。

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