6.21.2011

アンダーウェア

最近、竹本綾香の洗濯物がよく盗まれる。彼女はとても几帳面な性格なので、干す度に迷子の靴下がないことやTシャツの数をきっちり確認している。うっかり洗濯機から取り出し忘れた、などの原因は彼女に限って有り得ないことだ。第一、週に一度のペースで衣類がなくなるとなると、どうも本人のおっちょこちょいだという整理はしがたい。

下着泥棒ではない。その類は一度も盗まれていない。今まで取られたのは、靴下、トレーナー、タオル、帽子、Tシャツ。とはいえ、女性の庭に忍び込んで衣類を盗んでいることには変わりなく、危険性は否めない。更にいえば、犯人の目的が理解できないので展開が分からない。展開が分からなければ終結も見えてこない。不安は増すばかりだった。

警察にも相談してみたが、力になってくれそうにもない。竹本綾香は仕方なく、自ら犯人を確認しようとし、部屋の窓からこっそり庭の洗濯物を見張った。心の中ではノラ猫かカラスのいたずらであることを願った。

結局、犯人は猫でもカラスでも小学生でもストーカーでもなかった。

北風と太陽は相変わらずの仲で、二人の間の競争はエスカレートしていた。最初の方は、どちらが先に紳士が身につけたコートを脱がせることを競うゲームだった。ただ、このゲームは時間制限が不明で、北風も太陽も何日も何日も一人の人間につきまとうこともあった。

干された洗濯物を北風が奪えるか、太陽がその前に洗濯物を乾かせられるかを競う内容であった。早い者勝ちの要素を織り込んだのだ、と、竹本綾香は北風と太陽を正座させて小一時間説教してから聞き出したそうな。

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