5.26.2011

ざんこく物語

清史はタバコが大好き。珍しいことに、社会人になってから吸いはじめたらしい。飲み屋で尊敬する上司にすすめられたことがきっかけだった、と誰かに漏らしたことがあるという。

それと、彼はいわゆる良い家の育ちで、礼儀正しい人間でもある。ネチネチ言うことはないが、意見があるときは他人のマナーについても注意することもある。

二つを合わせて考えると、少なくとも彼が「タバコ」を「ポイ捨て」することは、ほぼあり得ないことであることが分かる。清史は社内では必ず喫煙室で吸うし、外出するときは携帯灰皿を常備している。

ただ、残念ながら誰にでも過ちというものもある。清史はあるとき、何もかも上手くいかない日があった。家では妻と喧嘩するわ、仕事でもミスはするわ、ガムを踏むわ鳥の糞はふるわ、とにかく踏んだり蹴ったりな日だった。ムシャクシャしながら六本木のバーで飲んで、大好きなタバコを吸って日頃の憂さ晴らしをしようと思ったのだった。飲み終わって店をでると、自分がくわえタバコをしていることに気づいた。携帯灰皿はバッグにしまっていたが、酔っぱらっている上にムシャクシャしているので、そこら辺にタバコをポイ捨てしてしまった。

その場所、その時間にちょうど最近有名なドラマ俳優がとおりすぎたのが不運だった。多くのカメラマンや記者のような人が彼のあとをついていた。その俳優が(かなり酔っていたが)清史に気づくと、ポイ捨てはダメなんだぞう、と大声でどなった。

翌日のスポーツ紙に清史の顔もくっきり出てしまった。

コメント0archive

Post a Comment

<< Home