小川のせせらぎ
小川のせせらぎに耳をよせた。栃山氏は悪者につれられ、山奥でボコボコにされていた。意識はあったが、身体は死体同然で動けなかった。耳をすまそうとそうしまいと大の字で青空を仰いでる状態は変わらないので、他人からみたら区別できない。ただ、本人はある瞬間を境に、明確に意識の全てを小川に集中させていた。
ちゃぷちゃぷちょろりん。そんな音に交わって、バシャリバシャリと何かが栃山の方に近づいてくる。先ほどの連中が戻ってとどめを刺しにきたかと思ったが、一人のようだ。いや、子供だ。子供が、小川をくだってきた。くだってきた?次々と疑問がわいてくるに関わらず、子供の足音は栃山のすぐとなりで止まった。
おじちゃん、だーいじょうぶー?
鼻がさわるくらい顔を近づけてきて、明るい声で聞いてきた。
おじちゃん、ああ、大丈夫だよ。ひなたぼっこをしてるんだ。ボクは一人で何をしてるんだい?
ふーん。ボクね、道に迷っちゃったの。
それで川をくだってたんだね。かしこい子だ。お父さんに教えてもらったのかい?
お母さんに教えてもらった。でももう、くたびれちゃったよ。ヘトヘトだあ。おじちゃん、おんぶして一緒に探そう?
おじちゃんは、もう少しここにいなきゃならないんだ。人を待ってるのでね。ボクもここで待っていきなよ。
そっかあ。わかった。
怖くないかい?
ボクもひなたぼっこする。楽しい?
そりゃあ楽しいとも。
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