12.08.2008

私は元気ですか

龍埼花子。リュウザキハナコ。
相変わらずものすごいインパクトのある名前である。

あけましておめでとうございます。
去年は、婚約いたしました。

とのこと。

私は彼女からの年賀状を、パラパラ見ていた束から取り出して妻に渡した。花子さん、婚約したみたいだよ。あら、そう。それはよかったわね。

実は、私も妻も龍埼花子のことを知らない。「良く知らない」のではなく、赤の他人的に「知らない」のである。早い話、宛先の間違った年賀状を受け取っている。おそらく彼女は、私たちの前にこの住所に住んでいた人に送ろうとしたのだろうが、その人がとっくにいないことに一切気づくことなく、かれこれ5、6年間、毎年年賀状を送ってきている。偶然にも、前の住民も私たちも「佐藤」であることから、この街の郵便局もスルーしてしまっているに違いない。

初めて彼女から年賀状を受け取ってから数年間は、私はてっきり龍埼花子は妻の友人だと思い込んでいて、同時に妻もてっきり私の友人だと思っていたようで、互いに疑問すら起きなかった。夫婦肩をならべて年賀状を一枚ずつ確認するわけではない。ふとしたきっかけで、2年前くらい妻が私にこの人誰だったっけ、と訪ねてきたのが初めてこの事態に気づかされたきっかけだった。

私たちは本人にも、郵便局にも、誰にも知らせていない。何も悪意はない。ずぼらなだけで、恥ずかしいことながら毎年忘れてしまう。同時に、少し罪悪感を感じながらも、新しい年賀状を受け取る度に見受けられる成長をひそかに楽しみにしているフシもないでもない。上京してきたとき、大学を卒業したとき、就職したとき、そんな人生の数々のステージを見知らぬ「佐藤」が見守っているのが少し愉快に思えるのだった。決して、良い子は真似してはいけないことだが。

綺麗に印刷されているものなので、おそらく龍埼花子はパソコンかなにかで年賀状のデータを一括処理しているはずだ。このまま放っておけば、年賀状は普通に送られ続けるだろう。誰も、大した損はしていないのではないか、と思っている。

来年は、花子さんはどんな名字に変わっているのだろうね、と妻と笑い話をする。

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