12.28.2008

傀儡政権

夕方19時、私は見知らぬ人の玄関で何をしているのだろう。
理由は分かっている、が、何故ここにいるのか良く分かっていない。
もっと大事なのが、ここからの出口が良く分かっていない。

小学2年生の息子がクラスメートの女の子を殴ってしまった。肝心な子供たちはとっくに仲直りしている。母親同士も既に決着はついており、最後の儀式として、停戦を示す父親会談が決裁された。無論、私は帰宅直後にその任務を伝えられたまでである。相手の親とはまったく面識がなく、気まずい展開になることは必然だ。相手の父親も、間違いなく同じ心境であると思われる。

「田中、いや、田中民生の父親の、田中です。」

「ああうう、神尾です、美香の父の。」

「この度は、申し訳ありませんでした。ほら、お前も。」
「だって美香ちゃんいないじゃん。」
「あ・・・いいから、美香ちゃんのお父さんに謝るんだよ。」
「だって。」

「ああ、いいんです、全然ケガしてるわけでもないんで。」

「いやぁ、本当にすみません。うちのが。」

「いやいや、こちらもこれほど大事になるとは思ってもいませんで。」

会話の終わりが全く見えてこない。

早く、帰る素振りを出さなければ・・・と思った。

「それでは・・・」

「お茶でも・・」

出遅れた・・・!

神尾氏の顔も明らかに引きつっている。自信の発言を後悔しているに違いない。私と息子は居間に通される。神尾夫人が用意していたケーキと紅茶が出されると同時に、事態は更なる迷宮入りとなった。

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