4.30.2006

残酷な話

少年は気分がよかった。

お祖母さんからアメ玉をもらったのだった。

ソーダ味の、大きなアメ玉。ソーダ味が、大好きだった。

アメ玉をズボンのポケットに入れた。ポケットの中に、大きな玉がごろごろしていて、その存在感に少年は大きな充実感を感じていた。大げさに聞こえるかもしれないが、小さな子供がズボンのポケットを使う機会というのは案外限られている。財布を持ち歩いてるわけでもないし、携帯電話に追われる日々を過ごしてるわけでもない。歩きながらも、少年はときどき手をポケットに突っ込んでは、アメ玉の形を確認した。

ハッカ味だったりして。。。なんて悩んだり、どれくらいなめたら小さくなるのか、とか、お祖母さんの台所の引き出しには他に何が入ってるのか、とか。少年は想像を膨らませ、わくわくしていた。母親にも、見せてあげたかった。お手伝いしたから、こんなのもらったよ、と。

とてもあったかい日だった。アメ玉が溶けてしまうといけないので、残りの距離は、少年はアメ玉に手で触れずに歩いた。

家に帰ると、アメ玉が亡くなっていた。
ズボンのポケットに小さな穴だけが残っていた。

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