6.17.2014

東通りの鍼灸院

くしゃくしゃになった宅配ピザのチラシやガスの料金明細の間に、一枚の見慣れないチラシが混じっていた。

「東通り鍼灸院・接骨院」

二駅となりの商店街だ。個人事業でもどんどん商圏を広げないとやっていけない時代なのだろう。健康保険で受診できます。受付時間は平日9:00〜12:30 15:00〜20:00、土曜は9:00〜12:30 (午前のみ)、日祝祭日は休診。電話番号、料金表、首・肩のこり、五十肩、スポーツ障害などのケアに、と丁寧に書かれている。

右手でペンを持つと体重が左に集中するらしい。少し前から左肩のこりが気になっていたし、鍼治療はやってみたかった。彼らの営業努力もかって、土曜日は東通り商店街まで足を伸ばして見ることにした。

翌る日。清潔感のある店先だったが、外から見える待合室に客の姿はなかった。入ると、一人ぼっちの年配の鍼灸師の案内で問診票を書かされてそのまま診療室へ。

「となり町からよくいらしてくださいました。待ってたんですよ」とゆっくり、笑顔でいう。

一瞬SFの世界に引き込まれた気分になった。実はあのチラシは自分だけに届けられていて、実はここに来る道筋は自分の意思とは別に準備されていたのか。実は、この爺さんただものではない…。

あ、問診票か。恥ずかしくなり、えぇまぁとぎこちなく答えた。

「鏑木さん、あなた今日肩こり以外のお悩みもお持ちのようですが、お時間の方は大丈夫ですかね?最近会社に行ってらっしゃらないようで、心配してたんですよ…。」

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