8.29.2013

夏の終わり

笑い話と同じで、怪談話にもオチがなければ成り立たない。そういう意味では、これからする話は怪談話と言えないかも知れない。ただ、実際おきた出来事であったことだけは確かだと言っておきたい。

ようやく落ち着いてきたようだが、今年の夏は本当に暑かった。何日目かの猛暑日だったか、私は気休めにベランダの物干し竿に風鈴をかけることにした。狭いベランダで風通しがあまりよくないせいか、ほんのたまにしか鳴ってくれなかったが、鳴ったときは少しだけ涼しい気分になった。ほんの、たまにだが。

ある熱帯夜、風鈴がおかしな音を発した。私が感じた限り無風のはずだったのに、突然チリリリン、と連続して鳴るのだった。風で鳴る音というより、まるで何者かが風鈴の短冊をつかんで無理やり振ったような。不気味だと思ったが、わざわざ怖いものを見るために布団をでて確認しに行きたくなかった。

その後もおかしな風鈴の音はほぼ毎晩続いた。普通に鳴ることもあれば、仕切りにチリリリリ、と鳴る続けることもあった。しかし慣れてくるにつれて、風鈴の短冊を振る何者かに悪意はないように思えてきたのだった。それ以上のイタズラが目的なら、いくらでもそのスキがあったはずだ。

ノラネコか幽霊か変質者か分からないが、こう暑くては正気で仕事にならんのだろう。

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