5.13.2018

シミュレータ

何億年前のこと。

神は悩んでいた。苦心の試作体「アダム」「イブ」がついに完成した。195,571,924体目でようやくイメージに近い形となった。見た目、機能、繁殖性、感情などほぼ完璧だ。二人とも少しバカで卑怯なのは少し心配だが、地球プロジェクトに住ませるに十分ふさわしい。

いざ本番前となると、多少怖気付く。実はというと、87,527,833体目の試作体「としお」「ひろすえ」も惜しかった。完成度でいえばとしおはアダムより優れていたのだ。知性、良心、思いやりの方面では比べ物にならないほどの有意差があったが、現実問題内気で少し短足ブサイクだった。ひろすえがどうも懐かないのは彼女の欠落もあろうが、いずれにしてもこのペアが上手くいかなかったのは実に悔やまれる。

としおとひろすえ、実は最近距離が縮まってきた。としお数百万年の努力が実り、会話を切り出せるように成長した。

「こ、こんど、メ、メシとかいきたいですね」

「メシってなに?」

「あ、想像なんだけど…つまり、あの、身体を動かし続けるためになんらか栄養とか摂取しないといけない気がして…それを一緒にすることでお互いの生命を認め合うこと、とか、できれば素敵だなと思って」

「ふうん。よくわからないけどいいわよ、メシ。神のやつがわたしたちを選んでくれたらね」

コメント0archive

Post a Comment

<< Home