6.27.2022

映画館

山田三郎、さいきん仕事を辞めた。問題をおこしてクビとかではないので、心は穏やかである。もちろん将来のことは考えなきゃいけないのだが、おおむね前向きな気持ちでいる。

 

日中はドトールで転職サイトを見たり本を読んだりしている(割とまじめに)。そうとはいっても平日の時間が余るので、映画館にいくことが多い。街の喧騒から切り離され、がらんとした暗い空間で思いにふけるのは気分が良い。

 

昨日もそんな夜だった。

 

新宿の短観映画館で、作品は独立系の邦画だった。指定席を選ぶとき、どこでも空いてますよ、と言われ、自分好みの真ん中列の横端にした。ひょっとすると、独り占めかも知れないとワクワクした。上映時間まで外のラーメン屋で夕飯を済ませることにした。15分前に戻り、店員の入場の案内を待つ。検温を受ける。席に着く。

 

自分の後に入ってきた客は二人。一人は最前列に向かう中年男。もう一人は後ろの方だったので、音でしか確認できていない。

 

エンドクレジットが終わり、会場の照明がゆっくり灯るとともに席をたった。

 

最前列の中年男が消えていた。なんだか不思議な気分になった。

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